幸福の味4(スマホ版)(二次創作風)
両親に孫の顔も見せたいし、
思い立ったら即行動で。
私の事をなにも知らない人と
付き合おうと決めた。
新しく恋人になったお相手は
私の友達でも何でもなく、
失恋して髪を切って赤に染めた私と
同じ色の髪で少し気が強そうな
端正な顔立ちの人だった。
でも、遊んでそうな見た目とは裏腹に
デートの約束の時、ベンチに座って
私が来るのを待ってくれるような優しい人だった。
そしてそんな優しい人に心を許した私は
お母さん譲りの髪型に戻した。
髪の毛を整えた時も一番に走ってきてくれた。
友人も褒めに来てくれた。
優しい彼とは気が合うのか、
何度もデートを重ねたし
不思議と素直になれた。
勿論、彼を想う気持ちも忘れなかったし
なにより優しくしてくれる彼に
なにかお返ししたい、という気持ちが芽生えたから
うまくやっていけたんだと思う。
彼と新しい年を迎え。
私達は結婚した。
春は別れと共に出逢いも運んできた。
子供の頃からかなりのひねくれ者で、
ずっと美味しい思いをしたくて仕方なかった。
両親の様に、家族を愛すのが当たり前のように
誰かに愛されて
生きていきたかったのかも知れない。
そう考えると安易に家族を捨て、
恋人と一緒になり。
恋人に捨てられたのもまた、
当然の報いだったのかも知れない。
幸福の味ってどんな味なんだろう。
ヒト欠片のパン?暖かいスープ?高級料理?
それは、きっと。
苦い物や、キライな物を口にした人に
与えられる至福の味なんじゃないだろうか。
美味しいものを沢山食べてぶくぶく太ったとしても
その美味しいものを毎日同じだけ口にすると
味がわからなくなってしまう。
飽きてしまう。
だからこそ、不味いものを食べてこそ。
美味しさを改めて再確認できる様に、
きっと神様が与えてくれた幸福の味なのだと。
end